研究概要 |
本年度の実績を下記に箇条書きする。 (1) Rad51の欠損はRad52のSUMO修飾を亢進させる ; 核に存在するRad52のみがSUMO修飾の標的になることを立証した(Biochem. Biophys. Res. Commun. 372, 126-130, 2008)。次に、MMS処理時に野生株で亢進するRad52のSUMO修飾が、組換え酵素Rad51の欠損によりさらに著しくRad52のSUMO修飾が蓄積するのを観察した。Rad51は一本鎖DNA(ssDNA)上に重合する能力を有し、Rad54はRad51-ssDNA複合体に相互作用しその機能を発揮する。そこでssDNAに結合できるが、その重合能が不十分で細胞内でRad54をリクルートできないrad51変異株を用いた結果、Rad52のSUMO亢進は観察されなかった。以上より、Rad52のSUMO化は効率の良いRad51のssDNAへのリクルートの開始に必要であり、Rad51のssDNAへの結合がRad52の脱SUMO化を促すと考えられた。 (2) Rad52は複製チェックポイント欠損により生じた異常な複製フォークに蓄積する ; 複製チェックポイントが欠損したrad53やmec1変異株をMMS処理すると、複製フォークが崩壊する。この条件下、rad53やmec1変異株でRad52のSUMO化の異常な亢進が起こることを観察した。ChIP on chip法によるゲノムワイドな解析を行ない、Rad52はSUMO化を受ける前に、通常は活性化しない複製開始点に蓄積することを見いだした。本発見は、複製チェックポイントの異常により、相同組換えを介したectopicな染色体異常の形成の本質を捉えたものである(DNA Repair 8, in press)。
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