研究概要 |
分裂酵母から初めてアクチンを精製し、その性質を調べた。分裂酵母アクチンは骨格筋アクチンと太さ、らせんの周期など構造的に区別のつかないアクチンフィラメントに重合することを電子顕微鏡観察、光回折法により示した。マグネシウムイオンを結合した分裂酵母アクチンは骨格筋アクチンより若干速く重合したが、カルシウムイオンを結合した場合、KClを加えるとフィラメントでなく顆粒状に重合する点が異なっていた。分裂酵母アクチンは骨格筋アクチンに比べ、分裂酵母プロフィリンと強く相互作用したが、骨格筋ミオシンとは弱く相互作用した。分裂酵母細胞中の濃度は8.7μMだった。 分裂酵母細胞を透過処理し、ミオシンS1を浸透させて収縮環のアクチンフィラメントをやじり構造に変換させてから樹脂に包埋し、連続切片を作製し、電子顕微鏡観察によりフィラメントの方向性を決定した。その結果、収縮環を構成するアクチンフィラメントの数は1,000-2,000本、平均長は約0.6μm反対方向のフィラメントがほぼ1:1存在していた。収縮環が収縮するにつれフィラメントが短くなることが初めて実証された。また、収縮環のアクチンフィラメントの配列を3次元再構成することにより、分裂酵母においては収縮環アクチンははじめ分裂面の1点から両方向へ重合すること、その後、方向性が入り交じり収縮が起ることを提唱した。収縮環を作るとき、細胞内のほぼ半量のアクチン分子を使っていることが分かった。
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