細胞周期抑制因子であるCDK阻害タンパク質p27Kip1の分解亢進が広範囲の癌で起こっており、p27の発現量低下は癌の予後と深く相関している。しかしながらその原因およびメカニズムは不明であった。我々はそれを解明すべく、p27の片側遺伝子をノックアウトしたp27の発現低下モデル細胞(p27-hKO)を作成した。その細胞を用いてマイクロアレイによる発現遺伝子解析を行った。その結果、機能未知の7回幕貫通Gタンパク共役型受容体GPR48/LGR4がp27の発現低下で発現が増加することを見出した。このGPR48の強制発現により癌細胞の浸潤能は著明に亢進し、ノックダウンすることによりこの細胞の浸潤能は抑制された。さらに個体レベルでの機能をマウス移植モデルで評価したところ、GPR48強制発現癌細胞の肺転移が亢進し、ノックダウン細胞では肺転移能が低下していた。さらにヒト大腸癌検体においてGPR48の発現を解析したところ、リンパ節転移とGPR48の発現亢進が相関していた。以上よりGPR48はp27の発現低下によって誘導される新たな浸潤転移促進遺伝子であることが判明した。またGPR48トランスジェニックマウスを情報により作製し、各組織の発現を調べた。RT-PCRによるGPR48m RNAの発現が確認された2系統を樹立した。タンパク質の発現を免疫組織染色およびイムノブロットで解析したが検出限界以下であった。十分なタンパク量を発現させるにはN末端にシグナル配列をつける等の発現ベクターの改良が必要と考えられる。
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