研究課題
進化的に保存された膜タンパク質複合体Secトランスロコンは、分泌タンパク質の膜透過や膜タンパク質の膜組み込みを促進するための、チャネルとして機能する。本研究において、研究代表者らは、バクテリア型モータ因子SecAを持つ高度好熱菌Thermus thermophilus HB8由来のSecYE複合体の結晶構造を、SecYに対する特異的なモノクローナル抗体Fabフラグメントとの複合体として、3.2Å分解能で決定した。得られた構造は、過去に構造決定された古細菌のSecYEβの構造とは異なるコンフォーメーション状態を持っていた。即ち、数本の膜貫通領域が分子外部こ向かって衝動し、細胞質側に開いた疎水性アミノ酸残酸基からなるクレバスが観察された。ジスルフィド架橋実験の結果から、バクテリア型SecYE複合体のこのpre-open状態は、FabフラグメントあるいはSecAが、SecY分子内の細胞質領域先端の共通の結合部位と相互作用することにより誘導される事を明らかにした。また同様の架橋実験から、SecA-SecYが相互作用している状況においては、SecYの上記細胞質ドメイン先端の幾つかのアミノ酸残基が、SecA単体構造中では通常分子内部に埋もれている領域内の特異的アミノ酸残基と近接することを明らかとした。これらの結果は、モータとチャネルとの相互作用時において、両者の協調的な構造変化が生じていることを示唆しており、恐らくは、この相互作用は、SecAからトランスロコンへの基質タンパク質分子の受け渡しや、トランスロコン結合に応答したSecA ATPase活性化において重要な役割を持つと考えられる。
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