今年度は以下の項目について検討し結果を得た。 1、Hemp1の局在と分子的性状に関する検討:当初の計画では電顕を使ってC末端側の配向性を検討する予定であったが、digitonin処理により細胞核の外膜を内膜と区別して選択的に透過性を上げられることを初めて明らかにした。この方法を用いてNemp1のC末端は核質側に向いていることを示した。Nemp1のシグナルペプチド様の配列が実際に機能するかどうかをウエスタンブロットにより検討した。シグナルペプチドの切断を検出し易くするため、シグナルペプチドとC末端側領域(Bt)のみを持つコンストラクトをアフリカツメガエル胚に発現させ、シグナルペプチドの切断が行われないin vitro翻訳系で合成したものと比較した結果、シグナルペプチドとして切断されることが示唆された。次に、核膜孔とNemp1の位置関係を調べるため、核膜孔の蛋白質Nup153に対する抗体を購入し、Nemp1との2重免疫染色を行った。その結果、両者のシグナルは一部を除いて共局在しなかったことより、Nemp1は主として核膜孔周辺以外の領域に存在すると考えられる。ただし強いシグナルで共局在するところも認められたことより、一部は核膜孔周辺で機能すると考えられる。 2、Nemp1の領域Bと相互作用する蛋白質の解析:Nemp1-BAF-Otx2の3量体の形成をGSTとの融合蛋白質を用いてプルダウンアッセイで検討したが、Otx2との複合体形成を示す結果は得られなかった。次にNemp1の領域B結合蛋白質候補であるUbc9とRanについて検討した結果、Ranとの結合が示された。Ranは核膜輸送に関わり、細胞質側ではRan-GDP型が、核質側ではRan-GTP型が多いとされている。検討の結果注目すべきことにNemp1はRan-GTP型とより強く結合することが示された。 なお、計画3は来年度の課題としで残された。
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