1. メダカを用いた骨形成メカニズムの解明 メダカ骨形成特異的トランスジェニックラインの創出により、メダカの椎骨形成が明らかになった。椎間板に相当する組織にいるtwist陽性の骨芽前駆細胞が椎体の周囲に移動し、椎骨の太さ、長さを獲得しながら、骨格が大きくなっていく。次に、各種メダカ骨格異常変異体の原因遺伝子をポジショナルクローニングにより単離した結果、骨形成の分子レベルでの制御が明らかになった。椎間板が欠失し、椎骨が癒合した変異体の解析からは、底板から分泌された1つのWnt family分子が、硬節の骨芽前駆細胞に働きかけることにより、この細胞が脊索周囲に移動し、順次、成熟し、石灰化することが明らかになった。また頭骸骨と尾びれの軌条形成に異常がある変異体の解析によって、原因遺伝子であるbrpf1はヒストンアセチル化の活性を持つMoz分子と複合体をつくり、その結果Hox family遺伝子群の転写維持に機能することが明らかになった。脊椎動物共通に、このMoz複合体が5'Hox遺伝子群を制御し、結果として、尾の形態制御を制御することを初めて明らかにした。 骨形成では、骨を造るシステムと骨を削るシステムが共同作業することにより、骨量と形態を維持していることが、哺乳類の解析から知られているが、我々は初めてメダカにも哺乳類同様の多核破骨細胞が存在することを明らかにした。咽頭歯部の破骨細胞は歯足骨のリモデリングに機能し、神経棘と血管棘の側を削っている破骨細胞は神経管、血管のモデリングに機能している。この破骨細胞特異的トランスジェニックラインの作出にも成功し、蛍光でビジュワルに観察できる。 2. 再生特異的蛋白としてのペリオスチンの機能 小型硬骨魚類では、メカニカルストレスに関与する細胞外マトリックス蛋白ペリオスチンは筋間中隔の形態維持と筋肉の発達を制御している。ペリオスチンノックアウトマウスの解析により、メカニカルストレスに関与する器官である心臓において、心筋梗塞後の心筋再生に必須の蛋白質であることが明らかになった。この結果は再度メダカにフィードバックされ、メカニカルストレス依存性の再生メカニズムが明らかにされる。
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