アフリカツメガエル卵細胞の受精機構を明らかにする目的で、卵細胞膜マイクロドメインに局在する分子群の機能解析を行なった。受精に伴い精子プロテアーゼによる部分切断を受けるタンパク質uroplakin IIIの細胞外プロテアーゼ切断部位の候補アミノ酸配列(Arg-Arg)をAla-Alaに変異させたuroplakin III(UPIII-RRAA)を構築した。293細胞発現系においてUPIII-RRAAを強制発現させ、インビトロでのプロテアーゼ感受性を検証した。その結果、カテプシンBに対する切断感受性の低下が見られた。今後、UPIII-RRAAの未受精卵での強制発現と、その受精成立への影響を検討する予定である。同じくアフリカツメガエル卵細胞の初期発生機構を明らかにする目的で、RNA結合タンパク質hnRNPKの機能解析を行なった。その結果、この分子が受精に伴いチロシンリン酸化とセリン・スレオニン脱リン酸化を同時に受けていること、そしてそのことによりhnRNP KのRNA結合能が正または負に制御されていることが明らかとなった。HnRNP Kと結合している母性mRNAは翻訳抑制を受け、その結つ合の解除は翻訳活性化につながると考えられる。未受精卵におけるhnRNP K結合性の母性mRNAを免疫沈降法により複数同定し、その卵活性化に伴う結合度の変化をとらえることができた。今後はそれら母性mRNAの卵及び初期胚における局在性や翻訳されたタンパク質の機能を明らかにしていく予定である。マウスおよびブタをモデル生物とする実験系においては、精子ファクターであるphospholipase C-zetaのプロテアーゼによる限定分解と分解産物の再会合を伴う作用機構を明らかにすることができた。
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