研究概要 |
細胞の極性は,しばしばmRNAの細胞質内局在によって確立される。ショウジョウバエ卵形成過程における生殖質アッセンブリーは,mRNA局在・係留機構の解析の良いモデル系の一つである。この過程では,oskar(osk)を始めとする様々なmRNAが卵母細胞後極に集積し,Fアクチン系の制御のもと,後極皮層に係留される。しかし,それら分子機構はまだよく分かっていない。我々は,生殖質をGFPで可視化することの出来るGFP-Vasa系統を利用した突然変異体スクリーニングにより,生殖質形成が異常となる系統を66単離している。そして,現在までに54系統が12遺伝子座のアリルであることを明らかにしている。本年度は,これら突然変異系統の解析を進めた結果,(1)アクチン重合に関わるCappuccino,Spireが,osk mRNAの後極への輸送・局在ばかりでなく生殖質因子の係留にも必要であること,(2)エンドソーム輸送系因子が,出芽酵母Mon2のホロモグであるCG8683と共に生殖質因子の係留に機能していること,(3)エンドソーム-Mon2経路の下流でCappuccino,Spireが関わっていることを見いだした。前年度までの研究から,long Oskアイソフォームがエンドソーム経路の活性化を介してFアクチン系を制御し,生殖質因子の係留に関わっていることを明らかにしてきた。本年度の研究は,今までの理解を飛躍的に前進させる可能性を秘めており,細胞極性確立,mRNA局在過程における膜輸送系と細胞骨格系との連携制御の一端を明らかにした点で重要な成果である。今後,研究を進め,さらに詳細な分子メカニズム解明を目指す予定である。
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