研究課題/領域番号 |
19370101
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
荻原 直道 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (70324605)
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研究分担者 |
江木 直子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (80432334)
高野 智 (財)日本モンキーセンター, 主任学芸員 (90370197)
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キーワード | 成長 / 形態形成 / 人類学 / 解剖学 / 進化 |
研究概要 |
本研究では、ニホンザル胎児標本の骨格構造をCTを用いて非破壊的に観察し、その3次元成長パターンを横断的に定量的に分析することを通して、ニホンザル骨格系の形態的特徴の形成メカニズムを明らにした。頭骨については、ニホンザル二亜種(ヤクシマザルとホンドザル)の胎児期における成長様式の比較を幾何学的測定学手法に基づいて行った。ホンドザルに比ベヤクシマザルは狭い眼窩、高いイニオン、長い吻部を持つが、こうした二亜種の形態差は、胎児期のごく初期に形成されることを明らかにした。また、頭骨の亜種間差と性差を、成体を対象に幾何学的測定学手法に基づいて分析し、サイズ・形状の双方で亜種間差および性差が存在することを明らかにした。一方、ニホンザルの踵骨を対象に骨梁構造の成長変化を観察し、骨梁構造の異方性などの成長変化を横断的に分析した。その結果、骨梁構造の形成は、運動や行動の発達に伴う力学的付加の増大と基本的には対応するものの、胎児期において骨梁構造がすでに観察されるなど必ずしも力学要因だけでは説明できず、遺伝的要因も寄与していることが示唆された。さらに、四肢骨のプロポーションの胎児期における成長変化を分析し、肢間指数は成長とともに減少し1に近づくこと、橈骨上腕骨示数と脛骨大腿骨示数は成長とともに増大すること、を明らかにした。こうして得られたニホンザル胎児期の詳細な成長軌跡は、霊長類骨格系の形作りのメカニズムを探る上で重要な基礎データとなる。そのため本研究で用いたニホンザル胎児標本のCT画像、それを元に構築した骨格立体モデル、標本の属性データを整理してまとめた3次元デジタルアトラス(データベース)を作成し、閲覧可能な状態とした。
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