研究課題
本研究では霊長類の胃内消化酵素ペプシンについて、旧世界ザルのコロブス類、新世界ザル、原猿について肉食(昆虫食)あるいは葉食など特徴的な食性をもつ代表的サル類を選び、胃内消化酵素ペプシンについて生化学的・分子生物学的手法による様々な成分のcDNAクローニングによる構造解析、塩基配列比較による分子進化的解析、酵母での発現系とsite-directed mutagenesisによる分子機能解析、さらに染色体マッピングなどゲノム解析の側面から解析を進めていく。19年度では新世界ザルの4種(ワタボウシタマリン、ヨザル、リスザル、フサオマキザル)についてcDNAクローニングと性質の解析を進め、既に報告しているコモンマーモセット成分との比較をおこなった。これらの種については化石や形態と、遺伝子レベルでの分類の違いが指摘されてきたが、ペプシンの分析ではヘモグロビンなどの遺伝子分析と同様、マーモセットとタマリン、リスザルとフサオマキザルがそれぞれ近縁である結果が得られた。19年度繰越研究ではペプシンのcDNAクローニングおよび胃から酵素の抽出についてオランウータン保存試料を用いて研究を進め、遺伝子重複がニホンザルなど旧世界ザルに比べ進んでいることを明らかにした。20年度では各霊長類種のペプシンについてペプチド基質を用いて機能の解析を進め、種間でみられるアミノ酸置換が酵素の機能にどのように影響するのか詳細な分析をおこなった。1-2個の少数のアミノ酸の重要な置換がおこったときに酵素の機能が大きく変わることが明らかとなり霊長類の進化の過程で食性変化と酵素の機能変化との対応を明らかにした。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Journal of Medical Primatology 37
ページ: 303-310
Comparative Biochemistry and Physiology, part B, Biochemistry and Molecular biology 152
ページ: 9-19