研究概要 |
本研究では霊長類の胃内消化酵素ペフシンについて、旧世界サルのコロフス類、新世界サル、原猿について肉食(昆虫食)あるいは葉食など特徴的な食性をもつ代表的サル類を選び、胃内消化酵素ペプシンについて生化学的・分子生物学的手法による様々な成分のcDNAクローニングによる構造解析、塩基配列比較による分子進化的解析、酵母での発現系とsite-directed mutagenesisによる分子機能解析、さらに染色体マジピングなどゲノム解析の側面から解析を進めた。21年度では前年度に続いて、各霊長類種のペプシンについてペプチド基質を用いて機能の解析を進め、種間でみられるアミノ酸置換が酵素の機能にどのように影響するのか詳細な分析をおこなつた。1-2個の少数のアミノ酸の重要な置換がおこったときに酵素の機能が大きく変わることがらかとなり霊長類の進化の過程で食性変化と酵素の機能変化との対応を明らかにした。ペプシンの活性中心は7つのサブサイトから構成されており、中心に位置するS1とS1'の役割が大きいと考えられる。本研究ではヒペプシンを主体に、活性中心のS1'について集中的な解析を進め,Tyr189とMet289が活性の制御に極めて重要なアミノ酸であることを明らかにした。またオランウータンではペプシノゲン遺伝子の重複が急速におこったことを明らかにし、類人猿に特徴的な遺伝子進化について明らかにした。
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