研究概要 |
(1) 高α-トコフェロール(Toc)形質の遺伝解析・選抜マーカーの開発 昨年度検出した効果の大きいQTL領域をゲノム配列情報と比較し, QTL領域内に存在するORFを調査した。その結果, α-Tocの生合成に関わる酵素γ-TMT遺伝子と相同性をもつORFが存在すること, および普通品種「いちひめ」と高α-Toc「Keszthelyi A. S.」の間でいくつかの塩基置換が存在することを明らかにした。塩基置換を基に, 「いちひめ」型と「Keszthelyi A. S.」型を完全に識別できるDNAマーカーを開発した。 (2) 高ルテイン形質の遺伝分析・野生形質との関係 種子中のルテイン含量は量的形質であり, ツルマメとダイズの2組の交配F2集団から推定した広義の遺伝率は0.667, 0.555であった。両集団のF2個体のルテイン含量は幅広く分布したが, ツルマメ並にルテインを高含有する個体は出現しなかった。粒重および開花期とルテイン含量に弱い負の相関を認めた。「十系780」×「日高」のRILで3連鎖群(D1a, D2, C2)に比較的寄与率の大きいQTLsを検出した。このうち, 粒重と開花期に関与するQTLs力弐連鎖群D2, C2に存在し, 上述の弱い負の相関と符号した。 (3) 高リノレン酸形質の遺伝分析 ツルマメの高リノレン酸形質の遺伝率は0.660であったが, 脂質含量とリノレン酸含有率との間に有意な負の相関を認めた。両形質に共通するQTLが連鎖群EのSatt384近傍に検出されたことから、脂質含量とリノレン酸含有率が同一の因子によって制御される可能性が示唆された。ツルマメの高リノレン酸含量をダイズに導入する困難性が推察された。
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