研究概要 |
高等植物は全身に張り巡らした篩管を通して特定のタンパク質やRNAを長距離輸送し,その輸送先で機能させることで器官・組織間の成長や分化を協調的に実行している。アラビドプシスGAI(GIBBERELLIC ACID INSENSITIVE)変異体原因遺伝子DELLAドメイン欠失GAI(ΔDELLA-gai)のmRNAが長距離輸送されることが報告された。しかし,その輸送の詳細はほとんど不明である。そこで,本研究はΔDELLA-gai導入タバコを用いてその矮化表現型と転写物の接ぎ木伝搬性について検討した。伴細胞特異的発現遺伝子GASのプロモーターを用いたGAS:ΔDELLA-gaiをタバコに導入した。接ぎ木実験はGAS:ΔDELLA-gai導入個体と野生型タバコで行い,接ぎ木20日後に穂木および台木において新たに伸長した腋芽をサンプリングし,抽出RNA分画のRT-PCRにてΔDELLA-gai転写物の輸送性の解析を行った。 GAS:ΔDELLA-gai導入タバコは野生型に比べて下位および中位葉での節間長が短縮され草丈はおよそ70%程度に矮化したが,葉数は野生型と比べ差は認められなかった。葉身長と葉幅は共に10-20%ほどの短縮があり,さらに葉色は濃緑を呈しchlorophyll濃度の増加が見られた。GASΔDELLA-gaiを台木とした接ぎ木では穂木の腋芽にてΔDELLA-gai転写物の増幅産物が得られ,台木から穂木へのΔDELLA-gaimRNAの輸送が確認された。また,ΔDELLA-gaimRNA導入個体を穂木とした場合の台木腋芽においてもmRNAが確認された。矮化性表現型の接ぎ木伝搬性は現在検討中である。また,トマトやリンゴ台木品種マルバカイドウでも同様の導入個体を育成しており,接ぎ木実験を進める予定である。
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