研究概要 |
ダイズやソルガムに含まれる全リン酸のうち、70〜90%はフィチン酸である。フィチン酸は、単胃動物では消化・吸収利用できないために、多量のリン酸が農耕地へ蓄積され、環境負荷の一因となっている一方で、穀物中に含まれるFeやZnはフィチン酸と強力にキレート結合しフィチンを形成しているため、これらの微量元素が吸収利用できない。そこで、本研究では、フィチン酸の低い穀類を育成することを目的に実験を行った。まず、2004年に突然変異剤EMS処理した変異体の中から低フィチンダイズを選抜し、これと日本で栽培されている品種とを交配した。2004年度に交配して得られてF1系統を2005,2006,2007年に連続して栽培し採取した種を、2008年6月にポット及び圃場栽培(F4系統)をした。開花日、百粒重などの品種特性、および収穫した種子について半粒法による無機態リン濃度、フィチン態リン濃度などを測定して、フィチン酸のより低い系統を選抜した。 F4系統の開花日、総節数、分枝数、主茎長などの特性は、フィチン酸の低い系統とフィチン酸の高い系統で大きな差はなかった。半粒法で測定した無機態P濃度は0.18〜7.65mg/gDWであった。これらの結果と特性や生育状況などから、フィチン酸の低い6系統、フィチン酸の高い3系統を選抜した。フィチン酸の低い6系統の全リン濃度は6.99〜10.85、さらにフィチン態リン濃度は1.67〜2.80、無機態リン濃度は4.12〜7.02mg/gDWであった。全リンに対するフィチン態リン濃度の割合は22.0〜28.4%となり、中でも、フィチン酸含量が最も低かったPN5-118-2系統の収量性および品質とも良く、フィチン酸の低い品種として有望な系統と考えられた。さらに、ソルガムについてもEMS処理によりフィチン酸の低い変異体を得た。次年度、この変異体をもとに収量性が高く、品質の良いソルガム品種の育成も行う。
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