研究課題/領域番号 |
19380013
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
実岡 寛文 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (70162518)
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研究分担者 |
小櫃 剛人 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (30194632)
猪谷 富雄 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (60087898)
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キーワード | フィチン酸 / ダイズ / ソルガム / 抗栄養成分 / リン酸 / 品質 / リン酸による環境汚染 |
研究概要 |
ダイズ、ソルガムは世界中の多くの国々で最も利用されている穀類の一つであるが、その穀実にはミオイノシトールにリン酸が6個結合した有機態リン酸化合物のフィチン酸が多く含まれている。フィチン酸は人間、豚、鶏などの単胃動物においては消化・吸収できないために大量のリン酸が排泄され、環境汚染の一因となっている。さらに、フィチン酸にFe、Znなどの微量元素がキレート結合したフィチンは、Fe、Znの吸収を妨げる抗栄養成分として広く知られている。そこで、フィチン酸に関わるこれら多くの問題を解決するために、本研究課題では低フィチンの穀類の開発を行っている。とくに、本課題ではエチルメタンスルホン酸(EMS)処理し得た突然変異体とわが国の西日本奨励ダイズ品種と交配し、その交雑種から安定した生産と環境適応性の優れた低フィチンダイズを、さらにソルガムにおいてもEMS処理して得られた多くの突然変異体の中から、低フィチン酸の低い系統の選抜を行い、フィチン酸の低いダイズとソルガムの育成を目指している。本報告書では、21年度の実験で得られた結果について述べる。 1.交配F5系統から低フィチンダイズの選抜 20年度までに得られたF5系統の中から高フィチン系統2系統、低フィチン系統4系統を圃場栽培し、生育期間の生育状況調査および収穫後の子実重、百粒重、分枝数や子実の全リン酸(TP)、無機リン酸(Pi)、フィチン態リン酸(Phy-P)濃度を測定し低フィチンダイズを選抜した。その結果、普通栽培品種に比較し、フィチン酸が55-60%低い系統を選抜した。この系統は普通栽培品種と同様に安定した収量が得られ、かつ西日本地域への環境適応性が優れていた。さらに、フィチン酸のみが低く、タンパク質、脂肪含量は豆腐および納豆の加工適性の良い普通栽培品種と同程度であり、この系統はフィチン酸が低く加工適性の高い新規なダイズ品種として有望な系統であると考えられた。 2.低フィチンソルガムの選抜 突然変異体の14系統群279個体を精密実験圃場で栽培し、収穫後の種子のTP、Pi、Phy-P濃度を測定し、フィチン酸の低いソルガムの選抜を行った。その結果、普通栽培品種のTPに対するPhy-Pの割合は85%であるのに対して、変異体では25から74%と大きな系統間差が見られた。その中でもPhy-Pの割合が17から33%と低い、低フィチン系統群として有望な1系統群が得られた。
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