研究概要 |
最終年次である平成21年度は,本研究のとりまとめを含み,以下の3点の課題を重点的に行った。 1.郊外における空閑地・既存農林地の新たな管理主体の検討 里山管理に携わる新たな主体として企業に着目し,関東地方を対象として,県レベルでの推進施策を整理するとともに,代表的な事例に関してはケーススタディを行った。 2.空閑地・既存農林地がもたらす効用の定量化 千葉県市川市の郊外部を対象として,現在見受けられる空閑地の分布を全踏調査によって明らかにし,内水氾濫時の被害軽減の観点から評価した。また,千葉県印旛沼流域を対象として,周辺市街地からの生活排水を浄化する場として都市近郊の耕作放棄田(谷津田)を位置づけ,谷津田の発揮しうる水質改善効果を定量化した。さらに,里山の木質バイオマス供給ポテンシャルを定量化し,収穫・輸送コストの観点から現実的な利用可能性を示した。 3.空閑地・既存農林地の農的活用による持続的利用・管理方策の提示 関東地方1都6県を対象として,農的活動の継続性を担保するものとして,近隣住居地区も含めた小規模物質循環圏の構築を考案し,需給バランスの分析から成立可能性を解明した。また,現場への展開方策を検討するため,埼玉県北本市の事例を対象として,都市住民による農的活動の成立経緯を明らかにするとともに,生ゴミリサイクル農園における有機性資源利用の先進事例について調査を行った。 以上の研究とこれまでの研究成果により,郊外において新たに発生する空閑地と既存の農林地とのそれぞれについて,1)空間的分布,2)適切な維持・管理によって発現される機能,3)維持・管理に関わる主体の3点が明らかにされた。したがって,本研究の最終的な目的は達成されたものと考えられる。
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