研究概要 |
ユビキチンを介したタンパク質分解系に関与するF-boxタンパク質がゴマノハグサ科,サクラ亜科の花粉側S遺伝子として同定されている.ニホンナシの花粉側S遺伝子を同定するため,S遺伝子座のゲノム構造解析を進めた.S4-RNaseの上流200kbと下流360kbをカバーするBACコンティグから6つのBACクローンを選択し,これらの全塩基配列を決定した.GENSCANにより遺伝子を予測し,BLASTXを用いたホモロジー検索を行った.S4smの欠失領域外の3個のF-box遺伝子(S4F-box)を見出した.一方で,長十郎(S2S3)のBACライブラリーを用いて染色体歩行を行い,S2-RNase周辺(530kb以上)とS3-RNase周辺(511kb以上)をカバーするBACコンティグを構築した.S4F-boxをプローブとしたゲルブロット解析から,コンティグ上には20個前後のF-box遺伝子が存在することが予測された.S2-RNaseを含むBACクローン(125kb)の全塩基配列解析からS2-RNase下流に2個のF-box遺伝子を見出した.F-box遺伝子は花粉特異的に発現し,S2とS4ハプロタイプ間で多型を示すことから,花粉側S遺伝子候補と考えられた. S4ホモ個体の雌しべにS4およびS9ホモ個体の花粉を受粉した.受粉12時間後の花柱おける和合・不和合花粉管の先端部微細構造を透過型電顕で観察し,比較した.和合花粉管先端では細胞膜は波状を示し,多数の分泌小胞,粗面・滑面小胞体,ミトコンドリアが観察され、盛んに伸長していた.一方,不和合花粉管先端では細胞膜は滑状を示し,ミトコンドリアが膨張・崩壊し,伸長停止状態に近づいていた.
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