研究概要 |
ニホンナシの花粉側S遺伝子もサクラ亜科と同じユビキチンを介したタンパク質分解系に関与するF-boxタンパク質遺伝子であると予想される.ニホンナシの花粉側Sを同定するため,S-RNase周辺のBACコンティグ上に存在するF-boxタンパク質の配列解析を進め,今年度はS_2-RNaseの上流域とS_3-RNaseを含むBACクローンの配列を解析した.得られた配列からGENSCANにより遺伝子を予測し,BLASTXを用いたホモロジー検索した結果,S_2-RNaseの上流域に5個の新規F-boxタンパク質遺伝子が見出された.S_3-RNaseを含むBACクローンにはF-boxタンパク質遺伝子は存在していなかった.現在までにS_4-Nasc上流290kbと下流359kbに6個,S_2-RNase上流166kbと下流121kbに10個の花粉特異的なF-box遺伝子が存在することが明らかになった.これらのF-boxタンパク質は分子系統樹により2つのグループ(IとII)に分類された.グループIIはハプロタイプ間での多型性に乏しく(92%の同一性),花粉側Sである可能性は低く,グループIのF-box遺伝子が花粉側S遺伝子候補となりうると考えられた. 一方で,S_3ホモ個体の雌しべにS_3およびS_4ホモ個体の花粉を受粉し,S_3-RNase抗体を用いたイムノゴールド法により,和合・不和合花粉管でのS-RNaseの局在を解析した.金粒子は和合花粉管内にも検出され,S-RNaseは非特異的に花粉管に取り込まれていることが明らかになった.
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