本年度は、樹木の円周モードの振動を得るための装置の改良を行った。 1.携帯型PCの出力は2Wであるが、直径10センチを超える樹木の円周振動モードを励起させるためには、アンプによる増幅が有効であることがわかった。アンプの電源には9V電池4個を用い、アンプの特性は1kHz以上のサイン波の波形が乱れることのない向路とした。 2.改良した携帯型樹木振動装置を用いて測定したシラカシ16本の第2共鳴周波数は、レーザードップラー装置により測定した値と一致した。 3.イヌエンジュの樹木を用い、12方向から振動を与え円周モードの第2、第3共鳴周波数を測定した。測定後、樹木を伐採し内部の腐朽状態を確認した。その結果、正常な樹木では、どの方向から測定しても共鳴周波数の値は変わらず、また、第2と第3の共鳴周波数の比は、常に約1.5であった。一方、内部に欠陥のある樹木では欠陥のある方向に依存して共鳴周波数が減少し、また、共鳴周波数比は1.5よりも低下した。また、位相は、内部に欠陥のある樹木では正常に比べ大きく減少することが分かった。 4.3.の結果より、正常な樹木では樹木内部を伝わる音速が一定であること、共鳴周波数や位相のずれや共鳴周波数比をプロットすることにより、樹木内部の欠陥の状態と位置が非破壊で推定できることが分かった。 5.改良前の装置を用いてミカン樹木の円周モードの第2共鳴周波数を測定し、プレッシャーチャンバー法による水ポテンシャルの値と比較したが、よい一致は見られなかった。 このような結果を踏まえ、来年度は北海道の街路樹で近年腐朽による倒木が相次いでいるシラカバの振動測定を行い、測定した樹木を伐採し、その断面の腐朽状態を確認したい。また、改良した装置で、ミカン樹木の共鳴振動と水ポテンシャルの相関を検討する計画である。
|