研究概要 |
【背景・意義】 樹木体内の水分量や腐朽等の内部欠陥の把握は樹木の生産・管理で極めて重要であるが、水分量測定や内部欠陥検出を現地において行うことは困難である。従来法では,切り葉より水分情報を得たり,釘やドリルを幹に打ち込んだりして,内部欠陥情報を得,非破壊的に水分や内部欠陥情報を得られなかった。本研究では,音響振動を用いた,まったく新しい原理の非破壊,非侵襲測定器を開発し,果樹としてミカン,緑化樹としてカンパ,カシ類,イヌエンジュ,ケヤキを用い,現地での幹の水分情報取得および腐朽等の内部欠陥の非破壊検出を行った。 【方法】 立木や原木丸太を,振動スピーカを用い,0.1〜10kHzのサイン波で10秒加振し,樹木より受けた信号を高速フーリエ変換して,円周振動の第2、第3共振周波数を測定し,それぞれより音速を算出した。円周振動の第3共振周波数/第2共振周波数の比も調べた。 【結果】 水分情報取得に関し,ミカン樹幹の音速が一日内で変化し,シラカシ幹の音速が夏より冬に上昇し,ケヤキの音速が降雨後に低下することがわかった。これらより時期による樹体内の水分量の違いが示唆された。 内部欠陥検出には,イヌエンジュ,カンバ類を用いた。健全なイヌエンジュ原木丸太では直径が大きいほど音速が大きく(健全なカンバ類立木も同様だった)、空洞や節ありの音速は健全木の直径-音速直線より著しくはずれた。また第3共振周波数/第2共振周波数の比では,健全な丸太ではほぼ1.5であるのに対し,空洞木と節あり木では1.5よりずれる傾向が認められた。これらの結果より、第2、第3共振の音速や第3共振周波数/第2共振周波数の比より、イヌエンジュの内部欠陥を検出可能なことが示唆された。 本研究より,新装置,原理の利用により,樹木体内の水分情報取得や,内部欠陥検出を非破壊的に行えることが示唆された。本装置,原理の開発により,樹木体内の新たな非破壊測定の基盤が確立した。
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