研究概要 |
(1)トマトのストレス応答性キナーゼの解析 トマトの塩ストレス応答性シグナル候補としてSNF1関連キナーゼ(SnRK)ファミリーのCBL結合キナーゼ(CIPK/SnRK3)に着目した.トマトにおけるCBL,CIPKの器官特異的発現を遺伝子とタンパク質レベルで解析した.SICIPK2mRNAが花で強く発現することが示された.抗-ササゲCIPK抗体を用いたイムノブロットでは花、特に葯において分子量約50kDaの強いシグナルが検出された.さらにイムノブロットではCIPKは花の膜画分に,CBLは葉の膜画分に検出され,どちらも可溶性画分には検出されなかった,抗SICBL4/SOS3抗体を用いたイムノブロットでは葉身で分子量30kDaのシグナルが検出され,塩ストレスにより増加した.SICIPK2がトマトの花器官,特に葯で強く発現していることは,他のCIPK分子種にはいまだ報告されていないユニークな点であり,SICIPK2が花粉の成熟にともなう乾燥耐性獲得機構に関与している可能性が示唆された. (2)トマトの塩、熱ストレス耐性に関与するオリゴ糖合成酵素 トマトMicro-Tomからガラクチノール合成酵素遺伝子SIGoIS2の全長cDNAをクローニングした.SIGoIS2 mRNAは高温ストレス,低温および塩ストレスにより植物体で一過的に誘導されることを示した.H_2O_2処理によりSIGolS2遺伝子発現が上昇すること,活性酸素刺激に特異的に応答する熱ショック転写因子SIHsfA2遺伝子の発現も同時に上昇した.さらにH2O2処理後にトマトの熱ストレス耐性が向上することが示された.全長SIGoIS2を大腸菌に組換え体タンパク質発現させたところmyoイノシトール存在下で大腸菌の塩ストレス耐性が顕著に向上した.以上の結果はトマトの高温.耐性獲得メカニズムにおいてSIGolS2発現誘導と適合溶質ガラクチノール生成が関与することと,その際に活性酸素シグナルとHsfA2が関与していることが示唆された.
|