我々は、トバモウイルスの膜結合180K複製タンパク質と共精製される低分子量GTP結合タンパク質の一種、ADP-リボシル化因子様タンパク質(ARL)を同定した。本研究は、ARLがトバモウイルスのRNA複製において果たす役割を解明することを目的とする。先ず、GTP結合型、GDP結合型ARLのどちらがトバモウイルスの増殖に関与するかを明らかにするために、arl変異株(4個あるファミリーメンバー中3遺伝子がT-DNA挿入により破壊され、トバモウイルスの増殖は完全に抑制される)で野生型ARLタンパク質を発現させようと試みたが、恐らくRNAサイレンシングにより、世代を追って導入遺伝子の発現が抑制されてしまった。別のアプローチとして、試験管内翻訳により合成した野生型、T33N[恒常的GDP結合型]あるいはQ74L[恒常的GTP結合型」変異ARLを、試験管内トバモウイルスRNA複製系に添加したところ、野生型およびQ74L型でのみ複製の昂進が観察された。このことから、GTP結合型ARLがトバモウイルスRNAの複製に必要であることが示唆された。複製複合体前駆体premembrane targeting complex(PMTC)画分には、ARLが極少量検出されたが、130K複製タンパク質との量比は膜結合性の複合体から精製した場合に比して低かった。また、PMTCをARL欠損シロイヌナズナ由来の膜と混合しても複製活性は現れなかった。これらの結果から、GTP結合(膜局在)ARLがトバモウイルスRNAの複製に重要であることが示唆された。
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