本研究は、植物がウイルスに対して示す主要な防御反応であるRNAサイレンシングの誘起機構およびウイルスがもつRNAサイレンシングサプレッサーの作用機作の解明を目的とする。本年度は、RNAサイレンシングに関わるタンパク質のタバコ脱液胞化プロトプラスト抽出液中での様態を明らかにするため、タバコのDCL1-4、HEN1に対する抗体の作製を試みたが、内在性の遺伝子産物を検出できる抗体が得られたのは、HEN1についてのみであった。この結果を踏まえて、細胞抽出液を分画して仮想のDCL-HEN1複合体を追跡することはペンディングとした。一方、この実験の過程で、我々はタバコ由来のHEN1の完全長cDNAを単離し、試験管内転写・翻訳によりHEN1タンパク質を合成し精製し、この画分に、二本鎖siRNAを2'-Oメチル化する活性を検出することに成功した。今後、このHEN1精製画分が長鎖二本鎖RNAからsiRNAを生じる活性をもつか否かを調べることにより、HEN1がDCLタンパク質と結合しているか、メチル化活性にDCLが必要かを検討したい。また、ToMVの130Kタンパク質が、二本鎖siRNA結合活性をもつことは、他の研究グループから発表され、我々もそれを確認することができた。HEN1タンパク質が、DCLタンパク質によるsiRNAの生成と共役してはじめてメチル化反応を触媒できるのではなく、単独でフリーの二本鎖siRNAをメチル化しているとすれば、フリーの二本鎖siRNAをめぐってHEN1と130Kタンパク質との間で競合が起きることが容易に想像される。
|