研究課題
トマトモザイクウイルス(ToMV)130Kタンパク質は、二本鎖siRNAに結合する能力をもつRNAサイレンシングサプレッサーである。通常植物細胞内ではほぼ全てのsiRNAが2'-0メチル化を受けているが、ToMV感染細胞では2'-0メチル化を受けていないsiRNAが蓄積する。これらのことから、130Kタンパク質はメチル化される前の段階で二本鎖siRNAを奪取すると考えられる。平成20年度は先ず、二本鎖siRNAの生成にかかわるDCLとメチル化酵素HEN1の間に130Kタンパク質が介入することができるかについての情報を得るために、DCLとHEN1の間の相互作用を検討した。このために、脱液胞化タバコプロトプラスト抽出液(BYL)の抗HEN1抗体による免疫沈降産物あるいはBYLを用いた試験管内翻訳反応により合成したHEN1-FLAGの抗FLAG抗体による免疫沈降産物に長鎖二本鎖RNAを添加したが、顕著なsiRNAの産生はみられなかった。この結果は、DCLがHEN1と同一の複合体を形成している可能性を支持するものではなかった。一方、我々は、研究の過程で、BYLを用いた試験管内翻訳反応によりAGO1を合成し、予めメチル化したsiRNAを添加すると対応するRNA-induced silencing complex(RISC)が形成されることを見いだした。さらに、BYLには内在性のHEN1活性が存在し、添加した合成非メチル化siRNAは急速にメチル化され、メチル化siRNAと同様にRISCを形成した。この実験系は、130Kタンパク質が優先的に二本鎖siRNAに結合し、HEN1によるメチル化を阻害する可能性を検討するために有用と考えられる。
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