研究概要 |
本研究の最終目的は、最近見つかったCardiniumとWolbachiaの比較を二つの点から行うことである。一つは、節足動物の性を操る体内共生微生物Cardiniumが宿主の免疫応答に係わる遺伝子を活性化するにもかかわらず、宿主の遺伝子を活性化しないWolbachiaよりも多くのハダニ類に寄生できる原因を解明することである。もう一つは、CardiniumとWolbachiaが共にハダニで細胞質不和合性を引き起こし、ハダニの系統によっては不和合性を起こす場合と起こさない場合がある。これらが両細菌によって共通の基盤のもとに起こっているのかどうかを明らかにすることである。 本年度は、Cardinium感染個体群の網羅的探査、Cardinum感染個体群における作用機構の解明、垂直伝播率の検討、抗菌タンパク質のクローニングと発現量の検討を目的として、以下の結果を得た。 (1) ハダニ類5種17個体群がCardiniumとWolbachicに二重感染していた。)これらの個体群のうち、生殖不和合性が見られた個体群について、いずれの共生微生物の作用によるかを解明した。その結果、二重感染個体群の生殖不和合性は、Wolbachicによる作用であり、Cardiniumはこの作用を増強したり、干渉したりしないことが分かった。39種129個体群を調査したが、Cardiniumによる性操作が行われている個体群を薪たに発見することはできなかった。 (2) いずれの微生物も垂直伝播率は高く、ほぼ100%が次世代に伝播した。 (3) ハダニのESTからdsx遺伝子に相同性のあるクローンを探索したところ、1クローンがヒットした。全長解析をしたところ、160アミノ酸残基からなるタンパク質をコードしていた。他の昆虫のdsx遺伝子のタンパク質コード部分の先頭部分に配列相同性があった。 (4) ハダニのESTデータをもとに、新たにオリゴアレイを作製した。ESTクラスタリング結果に基づき、4,318クローンを選び、それぞれ2カ所から60merプローブを作製した。予備実験で良好な結果を得た。
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