研究概要 |
エクダイソンパルスで誘導されるクチクラ蛋白質遺伝子の上流域をクローニングし、翅原基の培養係を用いてプロモーターアッセイの系を確立し、エクダイソンパルスに応答する配列を追跡した。遺伝子銃によるカイコの翅原基、翅組織への遺伝子の導入法を、器官の時期、培養条件について検討した。導入の確認にはGFPを用いた。さらに、遺伝子の上流部に突然変異を起こさせ、ゲルシフト法により応答配列の確認を行った。培養翅原基への遺伝子導入を確認後、翅組織にクチクラ蛋白質遺伝子(BMWCP2)の上流領域を含むプラスミド、あるいはその一部を削除したプラスミドを打ち込み、ルシフェラーゼアッセイを行った。この方法で翅組織での短時間の遺伝子導入に成功し,ホルモンに反応しクチクラ蛋白質遺伝子の発現を制御する領域を調べる事が可能となった。 BMWCP2の上流域を削る事により,プロモーター活性が低下し、FTZ-F1結合部位が1つ無くなるとホルモン反応性も著しい低下を示した。またFTZ-F1結合部位に突然変異を起こさせるとプロモーター活性の低下がみられ、ゲルシフトの結果からも結合部位に転写因子FTZ-F1が結合している事が推定された。これらの結果からBMWCP2の遺伝子発現はエクダイソンパルスに応答するFTZ-F1に誘導される事が確かめられた。さらに、異なるクチクラ蛋白質遺伝子BMWCP5ではFTZ-F1及びBR-C結合配列を同定し,BR-Cがプロモーター活性の促進と,蛹の時期に発現する時期特異性にも関係することを明らかにした。本研究で得られた結果により,クチクラ蛋白質遺伝子の発現誘導に関わる転写因子とその結合部位を明らかにできた。
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