平成22年度はクチクラタンパク質遺伝子及び転写因子の組織発現特異性を調べ、皮膚の真皮細胞での発現には転写因子で発現特異性があることを明らかにした.βFTZ-F1は胸部で発現するが腹部では発現せず、それに対してE74Aは胸部では発現しないものの腹部で発現することが明らかとなり、それに伴い胸部でBMWCP9が発現し、腹部でBMWCP4が発現することが明らかになった.また、頭部ではBR-CZ2が発現を決定することも明らかになった.これに伴い、頭部で発現するクチクラタンパク質遺伝子が限られることを説明することができた.これらの結果から、組織の特異性もエクダイソンシグナリングが制御し、それによって最終的にどのようなクチクラタンパク質遺伝子が発現するかが決定されることが明らかとなった.クチクラタンパク質以外にも、ドーパデカルボキシラーゼ遺伝子が上流に存在するβFTZ-F1結合部位にβFTZ-F1が結合することにより蛹化時にドーパデカルボキシラーゼ遺伝子の発現誘導が行われることを証明できた.さらに、初期応答性の初期遺伝子であるE74Bについて、遺伝子上流に存在する5種のEcREの同定及びこれらによるプロモーター活性化によりE74Bの上流に存在する複数のEcREにより低濃度のエクダイソンで当該遺伝子が誘導されることが明らかとなった.これらの結果は、エクダイソンのシグナルカスケードを明らかにする上で貢献を果たした.また、エクダイソン応答性の転写因子が実際に発現する遺伝子の上流部に結合し、プロモーター活性を高めることを明らかにした事で、このような研究に実験方法として新たな活路を切り開くことが出来た.
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