1.エクジソン生合成の経路の後半であるケトジオールからエクジソンまでのエクジステロイド類についてLC-MSを用いた微量分析・定量系を確立した。その結果、昨年度の成果も含め、コレステロールからエクジソンまで全てのエクジステロイド類をLC-MSで分析・定量できるようになった。 2.新たに見いだした生合成酵素と考えられるシトクロームP450のカイコにおける発現解析を行い、他の生合成酵素と同様に前胸腺特異的、かつエクジソン生合成の高い時期に発現量が高まることを見いだした。このP450遺伝子をショウジョウバエS2培養細胞に導入し、様々なエクジステロイド化合物の変換実験および上記LC-MSにより分析したが、今のところ基質分子を見いだすには至っていない。 3.エクジソン生合成と休眠の関係を明らかにするため、エクジソン生合成酵素である4種類のシトクロームP450(spook、phantom、disembodied、shadow)とNeverlandについて、ヨトウガからの遺伝子クローニングを試みた。その結果、それぞれの部分配列を得ることに成功し、現在全配列を明らかにするためにRACEを行っている。今後、休眠とエクジソン生合成酵素の発現量との関係を明らかにしていく予定である。また、ヨトウガの蛹休眠では蛹化後成虫化のためのエクジステロイドの上昇が見られないことを確認した。 4.前胸腺のエクジソン生合成を抑制する神経ペプチド(前胸腺抑制ペプチド)受容体がこれまでSex peptide受容体と考えられていたGPCRであることを明らかにした。この受容体は幼虫脱皮および蛹脱皮の前日に発現量が上昇することを見いだした。
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