カイコゲノム情報から明らかとなったG-タンパク質共役型神経ペプチド受容体49種類の発現パターンを解析し、ショウジョウバエの性ペプチド受容体と相同性が高い受容体遺伝子が、脱皮期の前胸腺で強く発現していることを見いだした。そこで、この受容体を哺乳類培養細胞(HEK293)に発現させ、この受容体に特異的に結合するリガンドを探索したところ、前胸腺抑制ペプチド(PTSP)が特異的なリガンドであることが分かり、この受容体をPTSP/性ペプチド受容体(PTSPR/SPR)と命名した。 2-デオキシエクジソン(2dE)をエクジソンへと変換する酵素shadowをS2細胞に導入し、基質となる2dEを培養液中に添加した。添加から24、48、72時間後に培養液から酢酸エチルでステロイドを抽出し、溶媒除去後に30%メタノールに溶解させHPLCを用いて定量したところ、時間に依存して線形的に生成物であるエクジソンの量が増加していた。このことから、培養液中に含まれるステロイドを定量的に測定する実験系が構築できたと判断した。現在コレステロールからエクジソンまでの代謝物をLC-MSで微量同定・定量できる系の確立を進めている。 生合成酵素であるシトクロムP450の活性調節には、他のヘム結合型タンパク質の関与が酵母や哺乳類で示されている。このうちの一種、MAPR(membrane-associated progesterone receptor)ファミリーに属する遺伝子がカイコ前胸腺に発現し、PTTHにより発現誘導されることを見いだした。今回、ショウジョウバエの相同遺伝子であるCG9066についてRNAiによる機能喪失系統の表現型解析を行ったところ、生合成酵素変異体と同様に胚性致死であった。また培養細胞系を用いてCG9066-FLAGとエクジソン生合成酵素である生合成酵素-HA類との免疫共沈降を行ったところ両者が結合していることが確認できた
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