研究課題
シミ目は、翅を持たず、変態も行わない祖先型を示す無翅昆虫である。そのため、昆虫の祖先的な体制を理解するにあたり、優れたモデルになると考えられる。そこで、シミ目が有翅昆虫に最も近縁な無翅昆虫であるという点に着目し、昆虫翅獲得の分子機構を調査することを目的として、既に飼育法を確立したマダラシミ(Thermobia domestica)においてショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で同定された翅形成のマスター遺伝子であるvestigialおよびそのコファクターをコードするscallopedについて以下の解析を行った。まず、in vivo遺伝子機能解析法として本研究により以前に確立したembryonic RNAi法により、胚におけるvestigialおよびscallopedの機能解析を行った。しかしながら、いずれの遺伝子においても胚致死となってしまった。したがって、embryonic RNAi法では表現型の解析が不可能であることが判明した。そこで、後胚発生期における遺伝子機能阻害を行うため、幼虫の体内への二本鎖RNA注射によるnymphal RNAi法の適用を試みた。その結果、いずれの遺伝子のRNAiにおいて、特異的な表現型が観察された。したがって、マダラシミにおいてnymphal RNAi法が有効であることが明らかとなった。現在、本方法を用いて、無翅昆虫における翅形成マスター遺伝子の機能を詳細に解析中である。また、有翅昆虫の中で最も祖先的と考えられている浮遊目昆虫の一種であるシロタニガワカゲロウ(Ecdyonurus yoshidae)を実験材料に用いvestigialの発現部位を調査するため、リアルタイムPCR法に基づく定量的RT-PCR法を行った。その結果、昆虫翅の起源を考える上で興味深い結果が得られた。
すべて 2009
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