植物共生微生物であるアーバスキュラー菌根菌のリン酸輸送の分子メカニズムを明らかにする目的で、以下の研究を行った。 1.アーバスキュラー菌根菌Glomus sp.HR1株の外生菌糸ESTライブラリー構築:培養できない本菌の菌糸を無菌的に大量に得るため、毛状根を用いたin vitro培養系を確立し、大量増殖系を確立した(研究協力者:草地試・大友量)。また、増殖高率の高い開放系で得られた菌糸からのRNA抽出プロトコールについても検討を行っている。 2.ポリリン酸合成酵素の特性解析:菌糸の細胞分画を行い、菌糸内での蓄積形態であるポリリン酸を合成する酵素の活性を検出すると共に、その酵素学的性質を調べた。また、この活性分画のプロテオーム解析を行うための予備検討師として、全タンパク質の抽出条件を検討した。 3.酵母ポリリン酸蓄積変異体の取得:mTn-3xHA/GFP transposonを利用し、網羅的な酵母変異株作成を行った。リン酸欠乏条件からリン酸添加後にポリリン酸を急速に蓄積できない変異株のスクリーニングを行ったが、現在のところ目的とする変株は取得できていない。 4.ミヤコグサ菌根特異的リン酸トランスポーター遺伝子ノックダウン株を利用した菌根菌ポリリン酸代謝遺伝子の取得:野生株およびノックダウン株の菌根から全RNAを抽出し、Megasort法(DNAマイクロビーズ法)を利用した競合ハイブリダイゼーションを行った。宿主植物と菌根菌の全遺伝子のうち、約8%が変異株の菌根中で発現が促進され、約12%が抑制されていた。現在、これら遺伝子の塩基配列を解析中である。
|