研究概要 |
脱窒活性を高めた水田土壌の室内実験系に以下の各種の分子生態学的手法や培養法を適用して、活発に機能している脱窒微生物群を特定し、系統分類遺伝子と脱窒機能遺伝子を解析した。東大農学部附属多摩農場(田無)の水田土壌を用いた。 Stable Isotope Probing法を適用し、土壌から抽出・分画した13C-DNAに含まれる16SrDNAを解析した結果、Rhodospirillales,Burkholderiales,Rhodocyclalesが脱窒に機能しており、その中でRhodocyclalesに属する新規なBetaproteobacteriaが優占していることが明らかになった。 土壌からDNAを抽出し、亜硝酸還元酵素遺伝子nirS,nirKをPCR増幅し、クローニング、シーケンスを行った。推定アミノ酸配列に基づいて系統樹を作成した。また、定量的PCRにより土壌中のnirS,nirKの量的変化を測定した。その結果、水田土壌には新規なグループを含む極めて多様な脱窒細菌が存在している事、nirK保有脱窒細菌がnirS保有脱窒細菌に比べて優占している事が示唆された。 我々が開発した新規な単離手法「Functional Single-Cell分離法」を実施した。土壌から脱窒能を有する56菌株が得られた。16SrRNA遺伝子塩基配列解読の結果、Rhizobiales,Rhodospirillales,Xanthomonadales,Pseudomonadales,Burkholderiales,Bacillales,Actinomycetalesなどに属するものであった。菌株の約1/4はnirKを保有しており、その他の菌株の多くがnirSを持つものと推定された。 以上、水田土壌の脱窒細菌群集構造に関する多くの新規な知見が得られた。また、脱窒細菌の多様な系統・機能遺伝子を収集することができ、次年度以降の準備が進行した。
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