研究概要 |
枯草菌の新規表層蛋白質として,まず細胞表層に存在するYqgAの細胞内局在を観察したところ、YqgAは対数増殖期の間、常に細胞表層に大量に存在するにもかかわらず、対数増殖期後期(OD600=0.5付近)にのみ細胞分裂面に局在し、他のタイミングでは局在が見られなかった。また、細胞分離を行えないlytE lytF cwlS欠損株においてその局在が観察されなかったことから、YqgAはlytE lytF cwlSと結合しているか、細胞分離面もしくは細胞分離後にリクルートされるタンパク質と相互作用していると考えられた。一方,枯草菌IseAは高濃度で細胞を繊維状化させる.その原因がD,L-エンドペプチダーゼの阻害であることを明らかにしているが,Listeriaの細胞分離酵素で,D,L-エンドペプチダーゼホモログであるp60の活性を阻害するかどうか明らかにするために、精製したp60の触媒活性ドメイン領域とIseAを混合し、細胞壁溶解活性を調べた。その結果、モル比でIseAが2倍以上存在するとp60の活性を阻害することが解った.さらにCwlO, LytEの2重変異株では細胞が膨潤化し,細胞増殖が停止することが解った.これらの蛋白質は細胞の側面に螺旋状に局在しており,側面での細胞壁の合成と細胞壁溶解酵素が強く関係していることが示唆された.2成分制御系YycFGは枯草菌で唯一必須の2成分制御系である.YycFGは他のグラム陽性菌にも認められる遺伝子であるが,この作用としてYycFGがCwlO, LytEを正に制御しており, YycFG欠損株はCwlO, LytE生産(活性)を減少させるため側面での細胞壁の合成が阻害され,その結果形態異常を起こし,致死に至ると推察される.
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