研究課題/領域番号 |
19380053
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中山 二郎 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40217930)
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研究分担者 |
永田 宏次 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (30280788)
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キーワード | 腸球菌 / クォーラムセンシング / スクリーニング / 阻害剤 / ゼラチナーゼ / 病原因子 / 抗感染症剤 / ポスト抗生物質 |
研究概要 |
腸球菌Enterococcus faecalisの病原因子の一つと言われるゼラチナーゼの生産は、GBAPと命名された環状ペプチドをオートインデューサーとしたクォーラムセンシング(QS)により制御されている。 GBAPとその生合成酵素FsrB、GBAPのセンサーキナーゼFsrCはfsr遺伝子群にコードされており、このQS制御系はfsr制御系と呼ばれている。我々はこれまでに、(1)FsrBによるGBAPの生合成、(2)FsrCによるGBAPのシグナリング、この2つを阻害のターゲットポイントとするクォーラムセンシング阻害剤を天然物からのスクリーニングおよびドラッグデザインにより開発し、新しいタイプの抗菌剤を創製することを目指した研究を行ってきた。そして、これまでにシアマイシンという放線菌の生産するペプチド性抗生物質が、FsrCによるGBAPのシグナリングを生育阻止濃度以下で阻害することを見出した。本研究では、(1)のFsrBを標的としたQS阻害物質創製に注力した。糸状菌二次代謝産物を中心にスクリーニングし、既知抗真菌物質ambuic acidが腸球菌のQSを10μMレベルで阻害することを見出した。Ambuic acidは、FsrBによるGBAP前駆体(FsrD)のプロセシングを阻害し、その結果、GBAPの生産が阻害され、QSが阻害されていることが判明した。またAmbuic acidは、同様に黄色ブドウ球菌のQSシグナルであるAIPやリステリア菌のQSシグナルであるLsrDの生合成も阻害し、ブドウ球菌においてはQSにより誘導されるヘモリシンの生産も抑制することが示された。今後、本物質をリード化合物としてより活性の高い分子を育種することで、抗感染症剤として有効利用可能な化合物の作出ができると期待される。
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