研究概要 |
哺乳動物の細胞質に存在するグルコシルセラミド(GlcCer)分解酵素、KLrP(エキソ型グリコセラミダーゼ)を同定した。本酵素の活性をRNAiで抑制すると、細胞内のGlcCer量およびGlcCer骨格を持つ糖脂質量が減少した。この結果は、KLrPが細胞の糖脂質代謝に関わっていることを示している。本酵素を大腸菌で大量に発現させ、グルコース及びガラクトースとの共結晶を作製し、X線結晶構造解析を行った。その結果、KLrPはαヘリックスとβストランドを8回繰り返す、典型的なTIMバレル構造を示し、β-ストランド4および7のC末に存在するE165とE373がそれぞれ酸/塩基触媒残基、求核残基であると推測された。そこで、E165D,E373D,E165Q,E373Qの4つ変異酵素を作製し、それぞれのGlcCer分解活性を測定した。その結果、野生型と比較してE165D,E373Dには若干の残存活性が見られたが、E165Q、E373Qはほとんど活性を示さず、両グルタミン酸残基が触媒残基であることが証明された。E165とE373の距離は5.3Aであり、本酵素は保持(retain)型の触媒機構を有することも分かった。 KLrPのホモログである、αKL,βKL,KLPHはGlcCer分解酵素活性を示さない。これらKlothoファミリータンパク質の一次構造をKLrPと比較すると、KLrPの酸/塩基触媒残基のE165は、αKL,βKLのαサブユニットではNに, KLPHではDに置換され、求核残基のE373はαKL,βKLのβサブユニットではそれぞれS,Aに置換されていることが明らかになった。つまり、Klothoファミリーの中でKLrPのみがGlcCer分解活性を示す合理的な理由が分子レベルで説明できた。 放線菌から単離したエンド型グリコセラミダーゼ(EGALC)の基質特異性を詳細に調べた結果、本酵素は6ガラ系列糖脂質に特異的に作用することが分かった。また、EGALCは加水分解のみならず糖鎖の転移反応も効率よく触媒することも明らかになった。この特異性を利用した、6-ガラ系列糖脂質の微量定量法を開発し、その方法を用いて、病原性の原虫、糸状菌、海藻等に6-ガラ系列糖脂質が存在することを初めて見出した。
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