研究課題
多糖は生体の構造やエネルギー生産・備蓄に大きく関与しており、その分解酵素であるグリコシダーゼも生命現象において重要な役割を担っている。従って詳細なグリコシダーゼ機構解明は、糖代謝関連疾患の医薬品、或いは農薬開発に多くの知見を与えると期待される。報告者は、機構解明の遅れているエンド型グリコシダーゼの機構解明を目指して、酵素反応遷移状態をミミックした安定誘導体を合成し、酵素との複合体形成を熱化学的に解析、複合体のX線結晶解析、さらに計算機科学手法を用いた解析により総合的に解析することを目的に本研究を行った。19年度は阻害剤として、推定する酵素反応遷移状態配座をミミックしてピラノース環をシクロヘキセンに置換したセロトリオース、トリガラクツロン酸誘導体の合成を行い、セロトリオース型についてその合成に成功し、ガラクツロン酸型についてはその保護体の合成に成功した。また、評価を目的にそれぞれのアルファーメチルグリコシドの合成を行い成功した。合成した誘導体の配座を、オーバーハウザー効果を利用して考察し、硫黄誘導体ではわずかながらひずみを持った天然型糖鎖の配座をミミックしていることを明らかとした。また、これら誘導体は対応する酵素と複合体を形成することが明らかとなった。また、熱化学的解析の検討を行いその初期データを得ることに成功した。計算機科学的アプローチでは、これまでに作成した動力学計算プログラムの最適化を行った。生化学的アプローチでは、酵素の安定性に関する重要な知見を得た。
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Biosci. Biotech. Biochem 72(in press)
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http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/2/biochem/yuki/index.html