研究概要 |
種子発芽阻害物質bacilosarcin AおよびBの関連物質と殺虫活性物質thiersinine AおよびBの全合成を中心として,生物活性天然有機化合物の合成研究を展開した。Bacilosarcin類と類似したイソクマリン/異常アミノ酸複合型構造を有し強力な細胞毒性を示すことが知られているPM-94128とY-05460M-Aの全合成は,L-ロイシンから導いた不飽和ラクタムに対するジアステレオ選択的なジヒドロキシル化を鍵反応として極めて短段階(9工程)で達成した。後者については初の全合成を成し遂げるとともに,構造を確定した。thiersinine類の全合成については,Wieland-Miescherケトンを原料とし,シクロプロピルケトンの金属還元,Stilleカップリング,2価パラジウムを用いるインドール環形成を経て,分子右側に相当する環構造(A-E環部)の簡潔な合成法を確立した。また,thiersinine類の構造的特徴となっている分子右側の3-オキソテトラヒドロフラン環構造部位についても,エノンのジエニルアリルエーテルへの変換とクライゼン転位により,エノンの2位にアリル基を導入することに成功し,クロスメタセシス,ダブルジヒドロキシル化等を経てモデル化合物の合成に成功した。これらの知見を併せて,現在thiersinine類全合成の最終段階を実施している。以上の他,いもち病菌が生産する植物毒素pyriculariolおよびpricuol,細胞毒性物質aspergillide A.B.Cならびにpachastrissamine, jaspine Aの全合成を完了した。
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