研究課題
昆虫由来の抗トリパノソーマ活性物質を探索したところ、カイコ蛹抽出物から強い抗トリパノソーマ活性を見出した。カイコ蛹を酸性メタノールで抽出し、Sep-pakC18カートリッジおよび二段階の逆相HPLCにより活性物質の単離を行った。H1およびC13核磁気共鳴スペクトル(NMR)および質量分析により構造決定を行ったところ、活性物質はビタミンB2として知られるリボフラビンであると同定された。リボフラビンは光により分解され、DNA障害を引き起こして細胞毒性を示すルミクロームを生じることが知られている。In vitroの実験では、通常の室内の光条件では非常に強い抗トリパノソーマ活性がみられたものの、全暗条件では非常に弱い抗トリパノソーマ活性しか示さなかったことから、活性の本体はリボフラビンの光分解物であると考えられた。トリパノソーマ原虫を腹腔内注射により感染させたマウスにリボフラビンを経口投与したところ、特別な光照射のない条件において、血中の原虫の増加およびマウスの死を有意に遅らせた。一方、リボフラビンを腹腔内注射しても治療効果はみられなかった。また、リボフラビンおよびルミクロームは経口投与において同等の延命効果をもたらした。リボフラビンはビタミンとして知られているように、摂取に対する安全性は確認されており、安全で経口投与可能な薬剤が存在しないトリパノソーマ症に対する薬剤として、新たな可能性を示すものである。ディフェンシン由来改変ペプチドは正電荷を持ち、負電荷を持つ細胞膜を攻撃する。改変ペプチドがトリパノソーマの細胞膜を攻撃する機構を明らかにするために、膜組成を測定したところ、酸性リン脂質のフォスファチジルセリンを含むことが明らかになった。このことから真核生物であるトリパノソーマも負電荷を帯びた細胞膜を持ち、改変ペプチドにより攻撃を受けることが示唆された。
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Peptides 30
ページ: 660-668
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry 73
ページ: 683-687
Bioscience, Biotechnology and Biochemistry (In press)