タイワンカブトムシ体液より抗トリパノソーマ活性物質の単離を行った。これまでに体液のSep-pakC18カートリッジの20%アセトニトリル分画に活性を見出していたが、この分画をさらに3段階の逆相HPLCで精製することにより、複数種の抗トリパノソーマ活性物質を単離した。現在これらの構造解析を行っている。また、今年度は他の昆虫種として、タカサゴシロアリからも抗トリパノソーマ活性物質の探索を行った。タカサゴシロアリ虫体全体の磨砕抽出物を、Sep-pakC18カートリッジに供し、アセトニトリル濃度を段階的に上昇させることにより分画した。それらの中の活性画分について、さらに逆相HPLCによる精製を行い、複数種の抗トリパノソーマ活性物質が存在することを明らかにした。 抗菌、抗ガン、抗トリパノソーマ原虫等の機能を持つ素材を開発するために、抗微生物活性、細胞毒性を持つ、昆虫ディフェンシン改変ペプチドを担体上に固定化することを試みた。綿布上に結合させたリンカーにアミノ酸を順次縮合させ、ペプチド合成を行うことにより、改変ペプチドが共有結合で固定化された綿布を作製した。この改変ペプチド固定化綿布は、黄色ブドウ球菌等の細菌に対して強い抗菌活性を示し、その抗菌活性は繰り返しの洗浄、オートクレーブによる滅菌にも耐久性を示した。また、骨髄腫細胞や白血病細胞などの、改変ペプチドが細胞毒性を示す血液がん細胞に対して細胞毒性を示した。これらの結果から、改変ペプチドの活性を保持したまま担体上に固定化することが可能であり、改変ペプチド固定化素材は耐久性を持つ有効な機能性素材となることが示された。改変ペプチド固定化素材は、血流内のトリパノソーマ原虫、血液がん細胞等に対する治療機器としての応用が可能と考えられる。
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