免疫疾患をプレバイオティクスによって予防・改善することの科学的基盤を、以下の三点について解析した。 1. 発育初期の腸内細菌叢が発育後のアレルギー発症に及ぼす影響を明らかにする目的で、妊娠・授乳期にフラクトオリゴ糖(FOS)を摂取させた母マウスから出生した仔マウスにおける経口免疫寛容の誘導についで調べた。その結果、母マウスのFOS摂取は仔マウスの経口免疫寛容の誘導に影響を及ぼさず、むしろ仔マウス自身のFOS摂取が影響することが示された。したがって、経口免疫寛容の誘導には、発育初期の菌叢よりむしろ誘導時の菌叢の影響が大きいと推察した。 2. 異なる品種の米を摂取した際の腸内細菌叢について、16S rRNA遺伝子のクローンライブラリを構築して解析した結果、ゆきひかり摂取マウスにおいてコシヒカリ摂取マウスと比較してムチン分解菌であるAkkermansia muciniphilaが少ないことが明らかとなった。また、ゆきひかり摂取マウスでは経口投与した食物抗原に対する血清抗体価は低く推移し、更にin vitroで測定した腸管のタンパク透過性も低かった。したがってゆきひかり摂取によるアレルギーの抑制・改善は腸管粘膜バリアと関係し、このことに腸内細菌叢の変化が寄与すると推察した。 3. マウスおよびラットの盲腸内容物中に病原性常在真菌であるCandida albicansの菌糸形成を促進する活性があることを見出し、このものが腸内細菌によって産生されることを示唆した。また、免疫したマウスの脾細胞をin vitroで抗原刺激した際に見られる抗原特異的抗体産生が、C. albicans菌体成分の添加によって促進されることを見出し、このことがマウス消化管へのC. albioansの定着による経口免疫寛容の誘導阻害と関連することを示唆した。
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