研究概要 |
生活習慣病には、がんおよび糖尿病など代謝症候群が含まれる。日本人の糖尿病の95%は2型糖尿病であり、インスリンへの感受性低下(インスリン抵抗性)と人種的に膵臓β細胞からのインスリン分泌能が低いことが特徴とされている。そこで、体の中で最大の組織で主要なグルコース利用組織でもある筋肉のかわりにラット由来L6筋管細胞を用いて細胞内へのグルコース輸送を高める食品因子を、膵臓β細胞としてラット由来RIN-5F細胞を用いてインスリン分泌能を高める食品因子を細胞培養系で探索した。その結果、H19年度内に大豆由来のイソフラボンであるダイゼイン(D)およびエクオール(E)がL6筋管細胞によるグルコース取込みを促進することを見出した。EはDから腸内細菌によって生成され、体内へ吸収されるとされている。そこで一夜絶食させたラットヘDを経口投与し、血清中のDとE濃度の経時変化を調べたところ、D(10mg/100g体重)は投与2時間後に最大濃度となり、48時間後までその高値を維持し、一方、EはDの経口投与12間後に出現し48時間後まで上昇し続け、EとD濃度の逆転は24〜36間後に起こることが認められた。この投与量を参考にして、次に2型糖尿病モデルマウスに0.1%D含有食を5週間摂取させたところ、血糖値の上昇が有意に抑制された。一方、ぶどうに含まれるレスベラトロール(R)はL6筋管細胞によるグルコース取込みとRIN-5F細胞からのインスリン分泌の両者を促進することが見出された。そこで、2型糖尿病モデルマウスに0.04%R含有食を5週間摂取させたところ、血糖値の上昇が有意に抑制されるとともに,正常マウスにくらべて2倍以上に上昇する血清中のコレステロール、トリグリセリド、過酸化脂質濃度が有意に抑制された。このように生活習慣病である代謝症候群が食品成分によって制御可能であることが強く示唆され、さらなるスクリーニングと詳細な機構解析研究を続行中である。
|