研究概要 |
本研究では、まず昨年度に引き続き,収集したListeria monocytogenes(LM)のhlyA, plcA, inlAおよびストレス耐性に関与する遺伝子であるclpC遺伝子の内部塩基配列による分類を行った。昨年と合わせて192株(食品・環境由来161株、臨床由来31株)について、本菌の病原遺伝子の一部であるhly、plcA, inlAおよびclpC遺伝子の内部塩基配列を決定し、塩基置換に基づく分類を行った。その結果、4遺伝子のMLST (multilocus sequence typing)では57グループに分類された。さらに詳細なサブタイピングを行うため、L. monocytogenes180株(食品由来162株、臨床由来18株)について、リボプリンターを用いてリボタイピングによる分類を行った結果、32グループに分類された。特定のグループに臨床由来株が集中することはなかったが、4遺伝子(hly-plcA-inlA-clpC)のMLSTによる分類とは異なっており、これらを組み合わせると73グループにサブタイピングされ、疫学調査における菌株の追跡には有効と思われた。表現型については、β-溶血性および2種のホスホリパーゼphosphatidylcholine-specific phospholipaseC(PC-PLC)、phosphatidylinositol-specific phospholipaseC(PI-PLC)の活性を調べた。その結果、臨床由来株はほとんどが強いβ-溶血性(16株)およびPI-PLC活性(14株)を示し、活性を全く示さないものはなかった。しかし、PC-PLC活性は臨床由来株中9株は強かったが、残りの9株は弱いか、全くなかった。以上の結果より、L. minocytogenesの臨床株では、溶血性やPI-PLC活性が高い傾向にあった。
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