研究課題
本課題は日本列島スケールでの環境変動が森林土壌内での物質循環、とくに窒素無機化・硝化速度に及ぼす影響について明らかにするため、北海道北部、関東北部、近畿中部、九州南部において表層土壌の現地交換培養実験(クロス培養)や室内培養実験、総窒素無機化・硝化速度の分析、微生物群集動態の解析などを行った。各地における気温や降水量の季節パターンは地点間で異なり、気温についは北から南にかけて上昇し、降水量は関東北部と九州南部において特に夏季に多い傾向を示した。現地培養の結果、各地の正味窒素無機化、硝化速度は地点ごとに異なる特性を示した。北海道北では年間を通じて正味アンモニウム生成速度が優先的であったのに対し、関東北部では正味硝化の占める割合が著しく高かった。一方、近畿中部では年間を通じて正味窒素無機化・硝化速度は低く維持されていた。これらの特性は、北海道における冷涼気候、関東北部における大気窒素沈着、近畿中部における過去の森林資源利用の影響として生じているものと考察された。交換培養による気候変化に応じて、各種の土壌窒素動態がそれぞれ変化したものの、全体的には初期に有している各地の土壌窒素動態特性が比較的保存されるという傾向を示した。また、近畿中部の温暖地域に移動することによって、他地域土壌の正味硝化速度が高まる一方、冬期間に北海道北部の寒冷気候地域に移動することによって正味アンモニウム生成が高まる傾向があり、温度環境の変化は各地の土壌窒素動態に無視できない影響を及ぼしていることが明らかとなった。温度・水分環境の変化に対する窒素動態の変化要因に関する定量的なパラメーター化については、本課題で得られた総窒素形態変化速度や微生物群集組成の変化などとの関係を中心に、さらに詳細な関係解析が必要である。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)
Environment International 36
ページ: 212-225
鹿児島大学農学部演習林研究報告 (印刷中)
Oecologia (印刷中)
環境科学会誌 23(印刷中)
Rapid communications in Mass Spectrometry (印刷中)
Ecological Research 25
ページ: 429-438
日本緑化工学会誌 35
ページ: 15-20
ページ: 202-205
Journal of Forest Research 14
ページ: 276-285
日本森林学会誌 91
ページ: 408-420
ページ: 388-393
「環境変動を予測しシナリオ群を作成する」「環境意識調査法-環境シナリオと人の選好・吉岡崇仁編」(勁草書房)
ページ: 63-90
http://ecosystems.lab.tuat.ac.jp/Resin/Xsites_home.html