研究課題
川渡・椎葉の両調査サイトにおいてブナ個体群からDNA分析用試料を採取し、葉緑体DNAの塩基配列分析によるハプロタイプの同定と、マイクロサテライトマーカーを用いた集団遺伝学的解析を行い、各調査サイトにおけるブナ個体群の遺伝的バックグラウンドを明らかにした。苫小牧研究林内で育成された北海道産と九州産のブナの若木に対し、奪葉と施肥を行い、エコタイプ間の光合成特性を比較した。産地・奪葉・施肥とも光合成速度や気孔コンダクタンスに対し有意な効果があった。しかし要因間の相互作用もいくつか有意なものがあり、各要因の効果は単純ではなかった。現在窒素・タンパク質含量の分析を進めている。黒松内、川渡、椎葉の3サイトのブナで樹液流計測を基に単木蒸散速度とその環境コントロールを観測した。その結果、黒松内、川渡、椎葉の順で樹幹通水性が高かった。また、樹幹通水性が高くなるにつれて気孔コンダクタンスの大気蒸発要求能に対する感度が鋭敏になる傾向が見られた。ブナの樹幹における木部構造の地理的変異について解析するため、北海道から宮崎までの17カ所の木部サンプルを森林総合研究所の協力の下に集めた。今後、木部組織構造、とくに水分通道に関与する道管径の地理的変異を解析する予定である。5月と8月において黒松内、川渡、椎葉の3サイトの葉形質と食害度をブナ林冠部の上部と下部に分けて調査を行った。LMAは5月も8月も林冠上部でより高くなり、また南に行くにつれて高くなった。しかし、5月の食害度では緯度勾配は見られず、椎葉以外では林冠上部と下部の違いが見られなかった。一方、8月の食害度は南に行くにつれて低下し、さらに黒松内と椎葉の林冠上部で食害度がより低下した。つまり、食害度の緯度勾配及び林冠内での空間的変異性は季節が進につれ徐々に顕著化することが明らかになった。
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Canadian Jouranl of Forest Research (in press)(印刷中)
Trees 23
保全生態学研究 (印刷中)
New Phytologist 176
ページ: 356-364