研究課題
日本列島に広く分布するブナは以下のように様々な機能的性質に違いを持つととが明らかとなった。1、遺伝子解析によりタワーを設置した黒松内と川渡はクレード1に、椎葉はクレード3に属することが明らかとなったが、川渡の年平均気温は黒松内と椎葉の中間よりやや椎葉に近かった。2、現場でのタワー観測によると、東北日本のブナは南西日本のそれと比較して林冠木の最大光合成速度は大きく変わらないが、葉の窒素含量が低く光合成窒素利用効率が高い。このことは共通圃場の幼木でも同じ傾向であった。3、現場でのリタートラップ解析によると東北日本のブナは南西日本のそれと比較して窒素生産力が高く、窒素滞留時間が長いため、固体全体の窒素利用効率も高い。共通圃場では東北日本のブナはリター中の窒素含量も低かった。4、現場での樹液流観測によると夏場の樹液流が多く水利用効率が低かった。5、現場での観察では東北日本のブナは咀嚼性昆虫による食害度が高いが、逆にゴールが少なくマイナーは明瞭な地理勾配がない。これらの傾向は共通圃場でも同様であった。また現場でのキャノピーノックダウンによると、黒松内の植食性昆虫の量は椎葉でのそれに比べて多かった。6、現場でのリターの分解速度はその場の環境条件よりむしろ葉の質の違いに影響されていることが明らかとなった。これらの形質は遺伝的にも固定されていると考えられることから、現在のブナ林生態系は環境変動に対してある程度可塑的に応答するものの、温暖化など急速な変化に対しては脆弱な側面もあると考えられた。
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