研究課題/領域番号 |
19380080
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
檜垣 大助 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (10302019)
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研究分担者 |
宮城 豊彦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (00137580)
井良沢 道也 岩手大学, 農学部, 准教授 (40343024)
佐々木 長市 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (30162374)
斎藤 宗勝 盛岡大学, 短期大学部, 教授 (70133254)
本多 和茂 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30279442)
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キーワード | 地すべり / 白神山地 / 森林植生 / 生態系 / 多様性 / 遺伝子 / 土壌 / 地形 |
研究概要 |
白神山地において、2006年に滑落した地すべり地の地すべり発生後の植生回復を、種構成と地表かく乱の関係から調べた。その結果、1.地すべり中央部に位置し、かく乱が少なく腐植層が残存し島状に植生が残る所では、ブナ林型の種の常在度が高い、2.地すべりの活動が大きく、表層かく乱や湧水の影響を受けた移動体下部,扇状地,2009年発生小規模地すべりの範囲では、ブナ林型の種と先駆的な種の両方の常在度が高い、3.移動体下部の急斜面では先駆的な種が優占していた。以上から、前年度までの結果も考え合わせ、地すべり地の植生回復では、地すべりの活動による地表かく乱程度が小さい引っ張り・圧縮の応力を受けない範囲で元のブナ林型植生が維持される一方、滑落崖や移動体末端の河岸に面する急斜面では、土壌侵食や礫の転動が原因で先駆型植生が優占することによって、結果的に、狭い範囲で植物種の多様性を生み出していることが分かった。 一方、地すべりブロック活動性の有無がその上の樹木の傾きに与える影響についても調べた。これには、昨年度までの樹齢と胸高直径の関係を用いて、直立性のブナの樹齢と傾きのタイプ及びその角度を調べ、地表変状と微地形から見た地すべりブロック範囲と活動性と比較した。その結果、(1)活動的な地すべりブロックでは、上部で山側への傾き、下部で谷側への傾きが多く見られる、(2)活動的ブロックと上方の非活動的ブロックの境界付近に傾きの大きい樹木が集中することが分かった。前者は、地形から見て円弧型のすべり面に沿った地すべり移動の結果と考えられた。後者は、ブロック境界で引っ張り変位が生じ樹木が傾いたものと考えられた。特定の樹齢以上でのみ傾きが見られるケースは少なかったので、白神山地の活動的な地すべりブロックは、断続的に移動を続けていると推定される。 以上のように、地すべり地の森林植生の種構成や構造は、地すべりの作り出す複雑な微地形による土壌・水文・地表安定性条件の場所的な差だけでなく、かく乱程度を通じて森林回復過程の場所的差、また、地すべりの新旧(活動性)の差によっても影響を受けていることがわかった。
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