研究概要 |
過去に菌根苗の野外順化にも成功しているショウロ,アミタケ,シモフリシメジ,クマシメジ,アカハツの5菌株について,それぞれの菌株ごとに液体培養菌糸体をアカマツ無菌実生100本に接種した結果,ショウロ,アミタケ,クマシメジでは,旺盛な菌根発達が見られたが,シモフリシメジとアカハでは,菌根の発達が殆ど見られなかった.このため,菌根苗の量産化が容易な種とそうでない種があることが明らかになった.菌根発達が見られた3菌株については,菌根苗80本をオープンポットに移植しガラス温室で順化を開始した. 菌根苗の室内形成に成功しているマツタケとツチグリについては,菌根苗の増殖が高い菌株を選抜する事を目的に菌根合成を行った.マツタケでは,長野県産の培養6菌株について菌糸伸長速度実験を行って3菌株を選抜し,さらに菌根合成を行った結果,最も菌根形成率の高い1菌株では,過去に種々の合成実験で用いられているY1菌株に比べ数倍の菌根量が認められ,菌株選抜が重要な事が明らかになった.ツチグリでは,国内各地より収集した菌株の分類学的検討とともに菌株の確立を行った結果,確立できた菌株間ではrDNAの塩基配列には顕著な差が見られないものの,コロニー形成速度には変異が認められ,菌株選抜が重要な事が推察された.幾つかの菌株で菌根合成を開始した. 人工的な菌根形成の殆ど知られていない分類群について菌株の収集を行った結果,ニンギョウタケ,ウスムラサキホウキタケ,ホウキタケ属の一種(仮称,シロミヤマ)で培養菌株の確立に成功した.
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