研究概要 |
ヒノキ科樹種の漏脂病、樹脂胴枯病による漏脂現象のメカニズム解明に関する4課題のうち、以下の2課題を実行した。(課題2)生理学的アプローチ:刺激伝達物質の定量と生理作用の解析:エチレン,ジャスモン酸とともにサリチル酸を樹幹に処理することで、傷害樹脂道形成におけるサリチル酸の生理作用を検討した。実験には石川県輪島市の林業試験場試験地に植栽されている36年生ヒノキアスナロ(マアテ)と鳥取大学教育研究林「蒜山の森」に植栽されている35年生ヒノキを用いた。処理薬剤にはエスレル(Et),ジャスモン酸メチル(JA-Me),およびサリチル酸ナトリウム(SA-Na)を用いた。実験時期は,マアテが5月24,25日に処理,7月9日に採取,12月4日に樹脂流出長を測定した。ヒノキについては,6月14日に処理,7月28日に採取,11月2日に樹脂流出長の測定を行った。この結果、マアテではSA-Naを混合した処理において,顕著な樹脂道形成が認められた。SA-Na濃度が5%の場合でも樹脂道形成は促進されたが,1%の時よりも小さかった。ヒノキでは,SA-Naによる樹脂道形成の促進効果は認められなかった。しかし,EtおよびJA-Me処理においてSA-Naの濃度増加によって樹脂道形成が抑制された。これらのことから,マアテとヒノキではエチレン,ジャスモン酸,およびサリチル酸に対する感受性が異なっているようであった。また特定の濃度のサリチル酸はエチレンおよびジャスモン酸の存在下で樹脂道形成に促進的に働くことが示唆された。これらの結果は2008年11月の樹木医学会大会(水戸市)、2009年3月の日本森林学会大会(京都大学)において発表した。(課題4)樹脂分泌機構を基盤とした林業・林産業における新技術の開発:2008年9月、タイのKasetsart大学のTrat Agroforestry Research Stationにおいて8年生Aquilaria crassnaを用いた有用樹脂成分の分泌促進の追加的な実験を行った。この最終結果は最後の報告書で取りまとめる。
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