研究課題
ミズナラの葉緑体変異について日本および韓国、中国、およびロシアを含む周辺地域の地理的分布から私達はこれまでに東北日本の集団と、南西日本の集団が氷河期に異なるルートを経て日本列島に移住してきたことを明らかにしてきた。このことはこれらの集団が南北の異なる気候環境への適応を果たしてきたことを示唆している。環境変動に応答したと考えられる遺伝子について塩基配列を南北集団間で比較することにより環境適応的な変異が検出できると考え、候補遺伝子のスクリーニングを行った。これまで調べたメチオニンシンターゼ遺伝子をはじめとする多くの遺伝子で明らかな南北集団間の違いを示すものは見つからなかったが、ミズナラ集団のDNAレベルでの多型性の程度が明らかになり、連鎖不平衡の特徴的な変化が示された。一方でミズナラの南北集団のフェノロジーの違いを表現型レベルで明らかにするため、北海道3集団(札幌、苫小牧、雨竜)、東北1集団(花山東北大学演習林)、中国地方1集団(大山)、および九州1集団(椎葉九州大演習林)で多数の種子を採集し、愛媛大学演習林圃場に播種した。これらについて次年度以降、発芽時期、開葉時期などフェノロジーに関する諸形質の計測を行うとともに産地の入れ替え実験を行って異なる環境への適応を調べる予定である。これらにより、日本に分布するミズナラの地域環境適応に関するマッピングが可能になり、適応的な変異が検出されればこれをマーカーとして樹木集団の遺伝的多様性保全のための指針を作ることが可能になる。
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