研究概要 |
種子捕食/散布者としての機能評価のため,森林性齧歯類のタンニン耐性の評価を行い,以下の成果を得た. 1岩手県盛岡市周辺において,齧歯類4種[アカネズミ(アカ),ヒメネズミ(ヒメ),ハタネズミ(ハタ),ニホンリス(リス)]を対象として,タンニン耐性(タンニン結合性唾液タンパク質及びタンナーゼ産生細菌量)の評価を行った.その結果,アカ,ヒメ,リスは加水分解性/縮合タンニンのいずれに対しても高いタンニン耐性を示すこと,そしてハタは低い耐性を示すことを見出した.また,タンニン耐性に著しい種内変異が存在しすることを発見した. 2富士山(以下F,ミズナラが多く分布)および高尾(以下T,コナラ属樹木は少ない)の個体群を用いて,リスのタンニン耐性の種内変異と生息環境との関連を検証した.野外での種子の持ち去り試験では,F群は堅果を高い割合で利用したが,T群は堅果をほとんど利用しなかった.飼育下でコナラ堅果(タンニン含有率約5%)のみを供餌したところ,T群では著しい負の影響を示したが,F群では負の影響は認められなかった.このことは,生息環境の違いによって,リスのタンニン耐性に分化が生じたことを示している. 3北海道大学名寄演習林において,アカ,ヒメ,エゾヤチネズミ(ヤチ)を対象として,糞中プロリン濃度からタンニン摂取量の季節変化を推定し,タンニン耐性との関連を検証した.アカ,ヒメでは秋にタンニン摂取量が増加したが,ヤチでは変化がなかった.タンナーゼ産生細菌保有量およびタンナーゼ活性との関連は認められず,タンニン耐性は唾液タンパク質の働きに負うところが大きいことが示唆された.
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